猿がヒトになった瞬間があるとすれば、それは、地球上で初めて人形が作られたときではないかと最近思うようになった。その人形がどのようなものだったかは想像するすべも無いが、生物史上初めて自己を客観的に認識したという証明だろう。ヒト以外の生き物は、自分は魚だ鳥だ猿だというようなことを思いはしないだろうが、自己というものを相対的に知覚することが出来るようになったヒトという生物はそれからどんどんヒトガタを作り始める。それは土器や石包丁の発明よりも随分と早い時代の出来事だ。ヒトは人の形を作り続けてきた。それが土偶にせよギリシャ彫刻にせよ、はたまた神や仏の御姿にせよ、ヒトの興味は人の形に向かいまだまだ飽きることはなさそうだ。それもそのはず、ヒトは人形をつくることによって初めてヒトたり得たのだから。