2015.3.1

昨年末に子供が生まれ、何かと慌ただしい日々を送っているけれどおかげで最近ある仮説を思いついた。

それは、江戸期の御所人形師は自分の子供が生まれてから3年目くらいまでに一番思いの入った人形を作ったのではないかというたいそうくだらない仮説だ。

このくだらない仮説の根拠その1は、子供というものへのリアリティだ。

今度の五月までに僕も息子の初節句に大きさ一尺程の御所をこしらえたいと思っているのだが、心のどこかにある一種の使命感を感じている。

御所人形は子に降りかかる災厄を退ける身代わりとして作られてきたが(本来の起こりは宮中なのだがここでは省いておこう)幼い子の健康を願い、何事もなく育ってほしいと親が思うのは今も昔も変わらないようだ。こんなに科学や医療が発達した現代でも幼い子の命はやっぱり危うい。それが江戸時代なら尚更だったろう。

僕が作った人形なんかに病気や事故をよけるとかそんな神秘の力は無いのだが、病気にならないでほしい、事故に会わないでほしいという祈りに似た気持ちをどうにか形にすることは出来るのだ。
そして、もう一つはくだらない仮説に相応しく非常に当たり前のことなのだが、自分の子供が生まれると単純に子供をよく観察するようになる。
僕自身日々我が子に接することによって、「子供」という造形が頭にしみ込んでいっている。子供をつくるのは難しいとよくいわれるのだがそれは、子供が大人の縮小版ではなく全身の隅から隅まで子供のフォルムをしていて実際に本物を見ないと作るのが難しいからだ。

僕は江戸期の人形師らが子をもうけた時に感じたであろう「子供」に対する思いを追体験しながら、自分もまた人形が作れる喜びを今感じている。

そしてもう一つ付け加えるならば、江戸期の御所人形達には制作年はおろか作者の銘すら入っていないので、僕の仮説を証明する手だては今のところ無いということ。