東京は入谷に鎮座する小野照崎神社は小野篁公を御祭神とし、芸事の神様として篤く信仰されている。また、宮司の小野貴嗣氏が会長を務める小野雅楽会は民間の雅楽演奏団体で最も歴史が古く今年で130周年を迎えた。宮司のご子息の小野亮貴さんとは太宰府天満宮修行中に出会い6年来の付き合いで、此度の小野雅楽会130年記念演奏会にてフィナーレの「貴徳」の舞手を務められることから恐れ多くもこの僕に面の制作をご依頼いただいたのだった。
何せ能面を含めて、仮面というものを作るのは初めてのことだから、舞楽面のリサーチから構想、制作まで2年を費やした。
2年という時間の中で現存するいにしえの貴徳面たちを自分なりに咀嚼して、現代の舞手の為の仮面としてようやく形にしたというところである。
2017年4月13日、初台のオペラシティで行われた公演に足を運ばせていただいた。舞台上に現れた「貴徳」はまさに人面一体となって神と化し鳴り響く雅楽の調べの中で文字通りみやびに舞っていた。僕はただただ陶然として、永遠にも感じられる時間の中に居た。
Photo: Kazuo Matsumoto
Photo: Ryo Saito
Dancer: Ryoki Ono